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決勝:勝利の貴種
Joel Larsson(スウェーデン) vs. Tom Martell(アメリカ)

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ヨエル・ラーション/Joel Larsson(青白赤フラッシュ) vs. トム・マーテル/Tom Martell(「貴種」デッキ)

 ドラフト6ラウンド、スタンダード10ラウンド、ざっと8万7千回の《ボロスの反攻者》の誘発、一度負けたら終わりの緊迫する決勝3ラウンド。それら全てはここに結晶する。《ボロスの反攻者》を駆るスウェーデン人のプロ、ヨエル・ラーション/Joel Larssonは、同じく《ボロスの反攻者》を駆るトム・マーテルと。「北の王者」の名を賭けて戦うのだ。

 両プレイヤーの使うデッキは、《ボロスの反攻者》こそ同じでも全く異なる。ラーションのアグロ型青白赤瞬速デッキは、アゾリウス、ボロス、イゼットの3つのギルドの組み合わせによって作られたものだ。サム・ブラック/Sam Blackの全面協力を得て作られたマーテルのデッキは、人間と生け贄効果のシナジーを活かしている。

 この決勝の記事を読む前に、まだ準決勝の物語を味わい尽くしていないのなら、是非読むことをお薦めする。どちらも第5ゲームまでもつれ込んでの逆転勝利で、そのマッチについてはこれから何年も語り継がれることだろう。

 しかし、本当の歴史というのは、このマッチの勝者のことである。どちらもプロ・ポイントは充分に持っていてもプロツアーでの優勝経験はなく、プロツアー「ギルド門侵犯」の優勝者として名を刻めるのはただ1人なのだ。

4万ドルとプロツアー「ギルド門侵犯」王者の称号まであと3勝と迫ったスウェーデンのヨエル・ラーションとアメリカのトム・マーテル。勝つのはどっちだ?

ゲーム1

 ラーションはこの最終戦の第1ゲームを2枚の《ボーラスの占い師》で始め、《送還》と《灼熱の槍》を得て体勢を整える。

 マーテルも2マナのクリーチャーを出したが、相手ほどのカード・アドバンテージは得ない。相手の1/3が2体あるのに対峙すると《悪名の騎士》はちょっと攻撃的ではないように見えるがマーテルは《未練ある魂》でペースを掴む。4マナを残している相手に攻撃するのは、《修復の天使》の世界に引き込まれる危険がある。

 マーテルの最初の攻撃に対して、やはり《修復の天使》が降臨するが、マーテルはすぐに《オルゾフの魔除け》で対処。戦闘終了後に、マーテルは《未練ある魂》をフラッシュバックする。Team SCGのプレイヤーの何人もがこのカードこそこの対戦の鍵だと判断していた。

 この間ずっと、2人はショックランドをアンタップで出すために大量のダメージを受けており、ラーションのライフは残り10点、マーテルのライフは残り14点だった。

 しかしラーションの危機は《冒涜の行動》が戦場を一掃したことで過ぎ去り、マーテルは《教区の勇者》2体で陣営を立て直しに入るも、それは長くは続かない。《ファルケンラスの貴種》もまた、ラーションの大量の除去呪文の前に同じ運命を辿った。

マーテルの《未練ある魂》と慎重に戦うラーション

 ラーションはついに《ボロスの反攻者》をライブラリーから引き当て、攻撃に移ろうとする。《ボロスの魔除け》と《瞬唱の魔道士》はすでに手札にあり、マーテルのライフはわずかに10点。《ボロスの反攻者》の攻撃が通ると、事実上の致命傷を与えることになった。

 ラーションはその後、マーテルの《士気溢れる徴集兵》を解決しての攻撃を受けたが、結局は8点のダメージで押し流したのだった。

ラーション 1-0 マーテル

ゲーム2

 ラーションはこの第2ゲーム、奇妙に見える手札をキープした。《灼熱の槍》《勇壮の時》《ボロスの魔除け》、後は土地だけである。《瞬唱の魔道士》を引き当てて幾分ましになったが、ラーションは、自分のデッキがいいものを持ってきてくれると信じているというのだ。そして、プロツアーの決勝にいるという現実を前に、それは強烈な説得力を帯びていた。

 《灼熱の槍》は強化された後で《教区の勇者》と結魂した《銀刃の聖騎士》を焼き切った。《教区の勇者》はその後、《宿命の旅人》のおかげでもう一度強化されることになった。

 ラーションのデッキがいいものを持ってくれるのはこれからだった。ラーションは《教区の勇者》を《瞬唱の魔道士》と《灼熱の槍》で除去すると、《修復の天使》を引き当てる。

 しかしそれはマーテルがより良いものを使うための糸口になっただけだった。《幽霊議員オブゼダート》である。

議員の指導を求めるマーテル

 《幽霊議員オブゼダート》は即座にラーションのライフを奪い始める。さらにブロック用に残していた《瞬唱の魔道士》を《悲劇的な過ち》でマーテルが除去しようとしたので、ラーションは対処を迫られた。《修復の天使》で救おうとしたが、そこに2枚目の《悲劇的な過ち》が飛んできて、マーテルは5/5クリーチャーで自由に攻撃できるようになった。《勇壮の時》でさえラーションを守りきれなくなり、《幽霊議員オブゼダート》がゲームを決めた。

「これはいいクリーチャーだなー」

 ラーションはカードを片付けながら言う。

「そうとも。最高のアドバイザーだよ」

 マーテルの言う通り、これは「伝説のクリーチャー ― スピリット・アドバイザー」そのものなのだ。

ラーション 1-1 マーテル

ゲーム3

 ラーションはまたも奇妙に見える手札をキープ。《平地》1枚、《魂の洞窟》1枚で《ボーラスの占い師》を唱えるぶんしかマナがないのだ。しかし即座に、最初のドローで《氷河の城砦》を引き当てる。しかし、手札には赤いカードが何枚もあり、赤マナを出す手段は存在していなかった。

 マーテルは1マナの《教区の勇者》から立ち上げたが、すぐに《ボロスの反攻者》によって用なしになってしまった。その後、《ボロスの反攻者》に効果的に突き刺さる《悪名の騎士》でマーテルが押し返す。

火力呪文で複数の小型クリーチャーに対処するラーション

 《火柱》で死なないのなら、それはそれ。ラーションが順調に伸ばしている赤マナで、除去はゆっくりと強化されていった。ラーションは自分のデッキを知り尽くし、そして前のゲームでうまく行かなかった直後にもかかわらず、信じていた。

 ここで、マーテルは《教区の勇者》を再び《宿命の旅人》で育て、そして《ボロスの反攻者》を唱えて盤面に均衡を取り戻すが、ラーションが3/3の《教区の勇者》をマーテルのライブラリーに戻したことで再び均衡が崩れる。

 次のターンに《ボロスの反攻者》が相打ちになって盤面は比較的均衡に戻り、ラーションの手には《アゾリウスの魔除け》と《火柱》。戦場では《宿命の旅人》と《ボーラスの占い師》がぶつかり合った。

 しかしマーテルの手は止まらない。《教区の勇者》と《ボロスの反攻者》で戦場での優勢を保つと、1/3に向かって攻め込ませる。

貴種デッキから強力な仲間が来るまで耐えようとするマーテル

 攻めきれなかった相手は、ラーションのデッキの一番上にある《雷口のヘルカイト》だった。速攻持ちのドラゴンは即座にマーテルに舞い掛かり、残りライフはわずかに3点。ラーションのライフは17点も残っていた。

 そして、マーテルは《ファルケンラスの貴種》を唱えた。

 《ファルケンラスの貴種》は2つの役割を果たした。1つめに、マーテルに《宿命の旅人》をブロック・クリーチャーにする生け贄の口を与えた。2つめに、マーテルが素早くラーションのライフを減らし始められるようにした。つまり、この局面においては完璧なカードだったのだ。

  ラーションは攻撃を受けて残りライフ10点。急激に危険が迫る。マーテルとのライフレースを制するべく、ラーションは《雷口のヘルカイト》と《ボーラスの占い師》で攻撃した。このときまでは、返しの攻撃も致死ダメージには1点足りないはずだった。しかし、マーテルは《オルゾフの魔除け》で《宿命の旅人》をリアニメイトした。これにより、ダメージはちょうど勝負を決める値に引き上げられたのだった。

ラーション 1-2 マーテル

ゲーム4

 決勝ラウンドに入ってからここまで、マーテルのマッチは同じようなパターンを辿っていた。1勝目は堅実に取り、2勝目と3勝目は一気に押し切るのだ。このパターンが繰り返されるなら、マーテルはここで勝利を収めることになり、つまり彼の初めてのプロツアー優勝、忘れられることのないジョン・フィンケル/Jon Finkelのマフラーにかけての勝利となる。

 この結末を迎えるために、マーテルは理想的な滑り出しを見せた。《教区の勇者》を最初の2ターンで3体並べ、ラーションの《ボーラスの占い師》を蹴散らせるようになったのだ。

 少なくとも、最大の《教区の勇者》を《灼熱の槍》で除去されるまではそうだった。マーテルも《悲劇的な過ち》を放ち、目障りなマーフォーク・ウィザードを除去してその仕返しをする。

教区の勇者》3体に対峙し、プロツアー「ギルド門侵犯」王者の夢を掴もうとするラーション

 それにめげずに、マーテルは次のターン、残った2体の《教区の勇者》で攻撃するも、大きい方が《瞬唱の魔道士》のフラッシュバックした《灼熱の槍》で焼かれてしまう。ここで再び《悲劇的な過ち》が将来のブロッカーを捉える。

 《教区の勇者》の大群から解放されて、ラーションは《ボロスの反攻者》を呼び出し、攻撃する機会を手に入れた。《アゾリウスの魔除け》を手に構えていたが、《教区の勇者》1体なら《ボロスの反攻者》で蹴散らすことができる。

 本当に?

 いいや。マーテルはここで《ファルケンラスの貴種》を出し、筋書きを一変させた。《アゾリウスの魔除け》が1ターン稼いだが、ラーションのライフはわずか8点、そして手札には土地以外のカードはなかった。何か助けがなければ、太刀打ちすることは出来ない。

 彼が引いたのは――土地。だがもう1ターンあれば、状況は変わるかも知れない……。

 2体目の、速攻を持つ、そしてとてもとても致命的な《ファルケンラスの貴種》が訪れる。何の手立てもなく、血に飢えたトム・マーテルの吸血鬼の群れに襲われ、ラーションはただ対戦相手の優勝を祝うことしかできなかった。

プロツアー「ギルド門侵犯」優勝は、トム・マーテル!



(Tr. YONEMURA "Pao" Kaoru)

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